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2001年 10〜12月

スポーツには記録と勝敗がつきまとう。記録は破られる運命にある。体力の進化が新しい記録を作り出す。数字に置き換えられたスポーツマンの努力が時代とともに次々に更新される。体力の進化にも限界があるだろうが、目標とされた記録は必ずいつか塗り替えられてきた。より速く、より高く、より重く、より美しく、より強く、もっともっとがスポーツを発展させてきた。しかし勝つことだけに意味があるわけではないのと同じように、記録を更新することだけがスポーツマンの使命ではない。イチローも高橋尚子も素晴らしいが、名もなきスポーツマンにも敬虔な思いを持ちたい。

2001.10.1


NO MORE WAR!

2001.10.10


助川健が亡くなった。彼は僕がこの音楽の仕事を始めて最初に知り合ったエンジニアでした。年が同じだったこともあり、僕が杉並に住んでいた頃に、彼も阿佐ヶ谷にいて、レコーディングが終わった後に車で送ってもらったりしながら仲良くなりました。村下孝蔵さんや尾崎豊さんや浜田省吾さんや、僕の制作するアーティストのほとんどすべての仕事を一緒にやりました。エンジニアとしての特別な才能があり、そんなに技術的なことなど詳しくはないけれど、こんな音にして欲しいというと耳で聞いて実現させるというようなタイプで、僕は彼の才能に随分助けられもしたし、刺激も受けました。あまり仕事をしすぎて、ある時期からは海の近くに引っ越してのんびり生きるようになり、それはそれでうらやましく思いましたが、僕は簡単に転換できずに、一緒に仕事をするチャンスも減り、2年ほど前に一度尾崎さんのライブのリミックスをやったのが最後の思い出です。ユーモアのセンスがあり友達がいのある男でした。もっと年をとったらゆっくり会うのを楽しみにしていたんですが、先に逝きました。すけさん、ありがとう。ご冥福をお祈りいたします。

2001.10.18


夏休みが思うようにとれなかった腹いせに、事務所内外で少し運動し始めたのが、何となく続いて2ヶ月過ぎた。今ではタクシーを利用しがちだった距離も早足で歩く。時間があればとにかく歩いていく。いい感じだなと思っていた矢先にちょっとした体力テストを受けたら、散々たる結果でガックリする。肉体はそう簡単には蘇生しない。

2001.10.22


 習うより慣れろという。四の五の決まり事や理屈を聞いていると、興味が薄れていく。たとえばスポーツにしても、ルールばかりを覚えていても実践の楽しさを最初に感じた方がいいに決まっている。やりながら細かいことを覚えればいい。仕事もしかりである。まずは慣れることからスタートする。リラックスすることが大切である。慣れれば気が楽になるものだ。習うよりも慣れることを進める。 

2001.10.29


 引っ越しの度に持ち歩くものは思い入れもあって捨てられないものなんでしょうが、そいつとの別れをきちんとするべき時はあるものです。うっかり捨てても、急に面倒になって処分しても、理由は何であれ、ずっと持ち歩くよりはましです。引っ越しの度に荷物が増える人は結局別れ下手な人です。感傷に浸るひまがあれば、車でも洗え。

2001.11.2


 事務所に向かう道の途中に大きな体育館があり、その脇には何人ものホームレスがいる。風を避けて吹き溜まりの空間に段ボールのスペースを確保している。僕がその場所を通るのは朝だから、彼らはいつも起きている。体を悪くしているのか、あまり活発には動かない。陽が当たる日には前進に陽を浴びようと身を乗り出しているが、雨の日や風のある日は頭しか見えない。痩せこけてすすで汚れた顔だ。よく目にするような集団ではなく、みんな一人でいる。彼らにとっての明日はどんな意味があるんだろうか。明日になって彼らはどうなりたいのだろうか。生きていることにどんな喜びを見つけられるのか。社会との関わりを断って生きることにどんな安らぎがあり、それはどのくらい辛抱できるものなのか。

2001.11.12


 木曜日は僕にとってある時期から特別の日になっている。毎週木曜日は朝からジムに行く。なまった体に活を入れる。最後に泳ぐ。その距離を少しずつ長くしてきている。限られた時間の中で運動しているから、少し無理がある。それでも僕はオリンピック選手のように華麗に走り、泳ぐ。汗をかいて、汗を流し着替えて、午後からの仕事に戻る。なぜ木曜日なのかといえば、週の中で一番気分がだらけるからである。先延ばしにしていた事項がたまってくる。それを木曜日の午後に片づけるのである。そのために勢いをつけるために僕は走り、泳ぐ。なのに腿を痛めてしまった。無理をしたからに違いない。それでもジムには行ってバイクをゆっくりとこぐ。スカッとしないから、午後も閉塞感の中にいて仕事がはかどらない。体が健康でなくてはいけないとはこういうことだと実感する。早く腿が回復するといいなあ。

2001.11.15


 空のこのあたりという特定は難しいし、海に関しても太平洋のこの辺でというような言い方は現実的には難しい。しかし、この丘のこのあたりというような地面の特定はできる。これが空軍や海軍と陸軍の違いではないか。地面を踏んで前進する兵隊が戦いを支配する。アフガニスタンの戦況を見ていて、そう感じた。戦いに必要なことは確実性である。

2001.11.19


 大阪での尾崎豊のバースデイイベントには全国各地からたくさんの方々に来ていただき、感激しました。10年目の節目ということでしたが、また新しい気持ちになることができました。ありがとうございました。全く興味のない方々にも一言だけいいたいことがあります。心にしみいる歌は少なくとも10年という年月を越えていくものなのだということです。会場で流れた「FORGET-ME-NOT」には涙が溢れそうになりました。また来年も会えたらと強く思います。

2001.11.26


 最近のことですが、日曜日の街で万引きをして逃げる女性を目撃しました。店の人が飛び出してきたので、「泥棒ですか?」と聞くと、少し興奮した表情でうなずいてましたが、近くにいた人は僕も含めて、「へえ」みたいな反応で誰一人追いかけることができませんでした。その理由というのが逃げている女性が本当に走るのが苦しそうで、何を盗ったのかはわからないんですが、身なりからして情けなくて、同情したというわけでもないんですが、わざわざ捕まえてもという気持ちになったんです。どうも洋品店から万引きしたようで、セーターかマフラーか、何かそのようなもの。これだけモノが余っている世の中で、あるものを首に巻いてりゃいいじゃないかって思いましたが、逃げる元気があるなら働いて気分良く買えばいいじゃないですか。師走です。

2001.12.5


 心を痛めて悩んでいることがあるとしよう。顔色が優れないねと人から心配されて、深刻な問題を抱えてはいるが個人的なことなんだと答える。社会的な問題ならみんなで知恵を寄せ集め力を合わせて解決する方法がある。個人的なことは自分で解決するしかない。心配してくれる好意に対しては感謝しつつも、相談できることではないという態度で接する。相談しても「どうしようもないと思われることはいつも時間が解決するしかない。時が経てば状況が変わる。人の心もこなれてくる」という答えが返ってくる。が、自分の場合、かなり長い時間が経過したけれど、いっこうに解決の糸口が見つからないと心の中で反芻する。むしろ病状が進行しているような気がして、かえって憂鬱になる。根幹にある病巣を摘出してしまえばいいのだろうが、その手術で命を落とすかもしれない。しかし、このままにしておいてもいずれ致命傷になるのは見えていると気をもむしかない。「迷いながらここまで来てしまった。痛みに対する恐怖心を取り去り、明るい未来を信じて、勇気を出すべきか、それとも、それは勇気ではなく無謀なことなのかもわからない。そんなことを相談されても困るでしょう?だから顔色が優れないままにしているんです」といわんばかりの人が近くにいたら、何ができる、あなたなら。

2001.12.12


 考えが浮かばない時、まとまらない時、人の意見にとりあえず反対する。相手の頭がよければ、自己の意見を考え直そうと努力し必ず欠点を見つけて反対されたことに敬意を持つし、相手が馬鹿なら、そもそも大した意見ではないから反対したことが評価される結果が待っているものだ。

2001.12.13


 いつまで働きますか?という問いに、死ぬまでと答える世代は自分たちよりもずっと上の世代だと思っていたが、これは世代の問題ではなく年齢の問題だということが最近わかってきた。働くだけ働いてリタイアしたらのんびりと人生を楽しもうと考えていたのに、働く必要がなくなる年齢に近づくと仕事に執着する 。だから「死ぬまで働く」発言になるのである。貧しいなあ。

2001.12.14


 パソコンの画面に向かって一日中仕事をしている人は多いんじゃないかな。会社に出て、パソコンのスィッチを入れて起動させると、まずはメールが来てないかとチェックし、いつも決めているサイトを見てからコーヒーをすすりながら仕事を始める。そんな人がズラッと机を並べて仕事をしているのがオフィスになった。部門ごとに雰囲気ががらっと変わることも少なくなって、部署の個性も薄れた。そして一人一人の個性も薄れていくような気がする。働くこととはパソコンに向かうことではない。

2001.12.23


 長いこと会えてない友達に年賀状を書く。一年に一度だけの言葉なので慎重に書こうと思うがなかなかペンが進まない。結局元気でいますかということでしかない。心を込めて書いた文面はいつも短い。想いが凝縮される。そして返ってくる返事も同じく短く、元気ですかの短い言葉である。そうして年を取る。同じスピードで年を取る。 

2001.12.26