| M&M | |||
| タクシーをつかまえるのが苦手だ。信号の少し先で突然停めても邪魔にならないような場所を選んで一歩車道に出っ張って待つ。雨が降っているときなどは視界が悪く、やっと来たと思ったら誰かが乗っていて、手を上げている僕を見て通り過ぎる。申し訳なさそうな表情をしている客などいない。おまえ、そう簡単にはつかまらないぞといってる。電車の滑り込み乗車に失敗したときと同じで妙に屈辱的な気分になる。五分も待ってつかまらない時には何事もなかったかのように歩き出してみる。そうするとそばを空車がスイスイと走り去る。客を拾いたくて焦っている運転手と、どうしてかうまく繋がらない。飛んでくる蝉を網で取ろうとしてしくじった記憶がよみがえる。そもそも日本人はこうしたコミュニケーションがへたくそなのだ。手を挙げて、「おい、ここで停まれ!」みたいな下品さがないといっておこうか。だから僕はタクシーには乗れない。乗りたいこともあるけれど、乗れない。乗らないのでなく、乗れない。
2012.3.29 |
|||